コラム

認知症は遺伝する?原因や予防法を解説

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認知症は遺伝する、という話を聞いたことがあるでしょうか。

なかには、血縁者に認知症患者がいることで「自分も認知症になるのではないか」と不安に感じている方もいるかもしれません。

 

そこで本記事では、認知症と遺伝の関係を、遺伝以外の原因や予防法とともに詳しく解説します。

認知症に関する正しい知識を身につけ、不安を払拭したい方は、ぜひご覧ください。

 

認知症は遺伝するのか?

 

多くの認知症は、遺伝とは関係なく発症しますが、「アルツハイマー型認知症」の一部は例外です。

アルツハイマー型認知症は、発症率を高める遺伝子が発見されており、血縁者に遺伝する場合があります。

ただし、この遺伝子があるからといって必ず発症するわけではなく、あくまでも可能性があるという話にすぎません。

 

アルツハイマー型認知症は、遺伝が関係する「家族性アルツハイマー型認知症」と遺伝が関係しない「孤発性アルツハイマー型認知症」に分けられます。

前者は、ご家族がアルツハイマー型認知症を罹患している場合に発症リスクが高くなるものの、割合でいうとそう多くはありません。

アルツハイマー型認知症全体の約9割が、遺伝とは関係せずに発症する孤発性アルツハイマー型認知症です。

 

また、家族性アルツハイマー型認知症の場合、40~50歳で発症するケースが多く、このことから、高齢者以外の発症は遺伝に由来している可能性があるとされています。

 

アルツハイマー型認知症が遺伝する原因

 

アルツハイマー型認知症が遺伝するのは、発症する要因に特定の遺伝子が関係しているからです。

 

そもそもアルツハイマー型認知症が発症するメカニズムは、まだ完全に解明されていませんが、その一因には「アミロイドβ」の蓄積があるとされています。

アミロイドβとは、健康な方の脳内にも存在する、タンパク質の一種です。

通常は一定期間で分解・排出されますが、これが特定の遺伝子の影響で分解されずに蓄積されると、神経細胞が死滅し情報の伝達が阻害されます。

 

ここからは、アミロイドβの蓄積に影響を及ぼす遺伝子を紹介します。

 

原因①変異した遺伝子

 

以下の遺伝子に変異が起こると、アミロイドβの蓄積が促され、アルツハイマー型認知症の発症につながります。

 

変異することでアミロイドβの蓄積を促す遺伝子

 

  • アミロイド前駆体タンパク質(APP)
  • プレセニリン1遺伝子(PSEN1)
  • プレセニリン2遺伝子(PSEN2)

 

これらの遺伝子の変異は、親から子へと受け継がれることがあり、結果としてアルツハイマー型認知症を発症するリスクをともないます。

ただし、アミロイドβの蓄積を促す遺伝子変異があるからといって、必ずしもアルツハイマー型認知症を発症するとは限りません。

 

原因②APOE遺伝子

 

アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβの蓄積には、先述した3つの遺伝子変異のほかに、アポリポタンパク質E(APOE)という物質も影響しています。

アポリポタンパク質Eを司るAPOE遺伝子には「ε2」「ε3」「ε4」の3種類があり、2つ1組で遺伝子型を構成しています。

 

APOE遺伝子の遺伝子型とアルツハイマー型認知症の発症リスク

遺伝子型 リスク
ε2/ε3 0.6倍
ε3/ε3 1.0倍
ε2/ε4、ε3/ε4 3.2倍
ε4/ε4 11.6倍

 

日本人に多い遺伝子型である「ε3/ε3」を基準としたときに、「ε4/ε4」のアルツハイマー型認知症の発症リスクは11.6倍です。

このことから「ε4」を含むほど、アルツハイマー型認知症の発症率が飛躍的に高まることがわかります。

 

人の遺伝子情報は、生涯変わることがありません。

アポリポタンパク質Eは、APOE遺伝子を両親から1つずつ受け継いで構成されるため、遺伝により認知症の発症率が左右されるといえます。

 

認知症が遺伝している可能性を調べる方法

 

原因となっている遺伝子の有無を検査し、ご自身にどの程度アルツハイマー型認知症の発症リスクがあるのか知りたい、という方も多いでしょう。

遺伝子変異とAPOE遺伝子を調べる、それぞれの検査の詳細を紹介します。

 

遺伝子変異の検査

 

アミロイド前駆体タンパク質とプレセニリン1遺伝子、プレセニリン2遺伝子の変異を調べる技術は確立されているものの、一般的な検査としては実施されていません。

なぜなら、これらの遺伝子変異による認知症の発症を予防する手段は見つかっておらず、検査するメリットがほとんどないためです。

 

APOE遺伝子検査

 

現在、認知症を発症する可能性を知る方法として有効なのが、APOE遺伝子検査です。

医療機関で5mlの採血を行い、血液検査によって確認します。

 

先述の通り、アポリポタンパク質Eの遺伝子型は、「ε4」を含んでいるほど認知症の発症リスクが高いとされています。

しかし、検査で該当する遺伝子型を発見したとしても、必ず認知症になるわけではありません。

早期発見することによって、対策を講じることが可能です。

 

認知症の遺伝を予防する方法はある?

 

現代の医学では、アルツハイマー型認知症の要因となる遺伝子変異、またはアポリポタンパク質Eが受け継がれることを防ぐ方法は、まだありません。

そもそも認知症が発症するのは、遺伝だけではなく、むしろ大部分は後天的な要因によるものです。

 

生活習慣病や運動不足など、認知症の発症リスクを高めることがわかっている原因はたくさんあり、こうしたリスク因子に関しては対策できます。

具体的には、食生活を改善したり有酸素運動を習慣づけたりと、地道な取り組みを続けることがもっとも効果的です。

 

遺伝以外に認知症が発症する原因

繰り返しになりますが、認知症は多くの要因が複雑に絡み合って発症します。

遺伝以外に考えられる主な原因は、以下の通りです。

 

認知症を発症する遺伝以外の原因

 

  • 睡眠不足
  • 肥満
  • 飲酒・喫煙
  • ストレス

 

ここからは、認知症の発症につながるこれらの原因を解説するとともに、対処法を紹介します。

 

睡眠不足

 

生活習慣が乱れた状態は、認知症の発症リスクを高めるといわれています。

リスクを下げるために、まずは十分な睡眠を確保することが重要です。

 

認知症の原因となるアミロイドβは、ノンレム睡眠の際に脳内から排出されます。

そのため、睡眠不足が続くとアミロイドβの蓄積を招き、認知症の発症リスクを高めかねません。

 

適切な睡眠時間は人によって異なりますが、目安として毎日6~8時間を確保し、身体と脳をしっかりと休めましょう。

 

肥満

 

不摂生な食生活から肥満になると、さまざまな生活習慣病のリスクが高まり、認知症の発症リスクにも影響します。

なかでも糖尿病に罹患すると、アミロイドβの分解が阻害されることで、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症に至る可能性があります。

 

肥満になることを防ぐためには、炭水化物に脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンの5大栄養素を意識し、バランスのとれた食事を心がけてください。

栄養バランスのほかには、可能な限り塩分を控えることや、間食を控えて摂取カロリーの基準値を遵守することも、食事で意識したいポイントです。

 

また、適度な運動を習慣化するのも、健康的な体型を目指すうえで効果的です。

有酸素運動を行うと脳細胞が活性化され、認知機能の維持と低下防止に効果があるといわれています。

ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を1日30分、週に3~5回程度行うのがおすすめです。

 

飲酒・喫煙

 

飲酒や喫煙は脳卒中のリスクを高め、ひいては認知症の発症を招くおそれがあります。

脳卒中と認知症の関係は深く、脳卒中を起こした10人に1人は、1年以内に脳血管性認知症になるという研究結果も報告されています。

 

これらのリスクを減らすには、お酒を適量に控え、禁煙するしかありません。

とはいえ、すぐに習慣を変えるのは難しいでしょうから、少しずつ量を減らしていくことを意識してみましょう。

 

参照元:厚生労働省「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」

https://www.mhlw.go.jp/content/001100282.pdf

 

ストレス

 

日々のストレスも、認知症に結びつくおそれがあります。

 

人がストレスを感じたときに分泌されるストレスホルモンには、血の流れを悪くする作用があり、これによって、脳の神経細胞に酸素が供給されにくくなります。

定期的にストレスを解消していればリスクを下げられますが、溜めこんでしまうと記憶を司る海馬が委縮し、認知症を発症してしまうのです。

 

ストレスを抱えている自覚がある場合は、趣味の時間を設けて好きなことに没頭するなど、気分転換してみましょう。

また、大きな悩みがあるときは、1人で抱え込まずに周囲を頼ることも大切です。

 

認知症かも?と思ったら

「認知症かも?」と感じる症状がみられたら、すぐに専門医に相談しましょう。

 

認知症は進行性の疾患であり、徐々に症状が悪化していきます。

認知症の可能性がある場合は医療機関を受診し、早期発見することが重要です。

 

一般的に認知症は高齢者が発症しますが、なかには65歳未満で発症する若年性認知症も存在します。

「物忘れが激しくなった」「注意散漫によるミスが増えた」といった症状がある場合は、若年性認知症を発症している疑いもあるため、専門医にご相談ください。

 

認知症が遺伝する可能性はあるものの、後天的な要因で発症するケースのほうが多い

 

本記事では、認知症と遺伝の関係を解説したうえで、発症の原因や予防法を紹介しました。

 

多くの場合、認知症は遺伝とは関係なく発症しますが、アルツハイマー型認知症においては、原因となる遺伝子が親から子へと受け継がれることがあります。

しかし、遺伝によって発症するケースは割合として小さく、後天的な要因によって発症することがほとんどです。

遺伝自体を防ぐことは困難ですから、認知症の発症リスクを下げるために、生活習慣の見直しから始めてみましょう。

 

ルネクリニック(https://renee-clinic.jp/)では、再生医療外来で認知症治療を提供しております。

ご興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

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