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認知症の初期症状を確認!周囲がとるべき行動とは?

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認知症の早期発見には、どのような症状が認知症の前兆なのかを知る必要があります。特に、家族や身近な人に、認知症の疑いがある行動が見受けられてお悩みの方は、前兆を知ることで次に取るべき行動を判断できるようになるはずです。

そこで本記事では、認知症の初期症状をリスト化して、その具体的な内容を解説します。患者様本人との向き合い方や周囲がとるべき行動、認知症の予防策も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

認知症の初期症状チェックリスト

認知症の前段階として、「軽度認知障害」があります。

軽度認知障害とは、記憶を忘れるなどの症状が出ているものの、はっきりと認知症とまでは診断できない、グレーゾーンの状態のことです。軽度認知障害になると、約40%の方が5年以内に認知症に進行します。

数年をかけて徐々に進行していくため、早期発見による対策が重要です。したがって、身の周りの方や、ご自身に当てはまるものがないかチェックリストで確認しましょう。

次項から、代表的な6つの初期症状を解説していきます。

参照元:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について」

 

記憶障害

脳の海馬という部分が損傷を受けると、記憶障害が起こります。自覚することが難しい症状もあるので、身近な人から指摘を受けたことがある方は要注意です。

以下が認知症による記憶障害の症状となります。

 

【記憶障害の具体的な症状】

  • 同じことを何度も聞いたり話したりする
  • 同じものを何度も買う
  • しまい忘れや置き忘れが多くいつも探し物をしている
  • 新しいことが覚えられない
  • 予定をうっかり忘れる
  • ものをなくしたときに周りを疑う

 

上記のチェックリストがあてはまる場合、認知症による記憶障害の可能性があります。何か物をなくしたときも、「盗まれた!」と思って真っ先に人を疑ってしまうのもこの症状の特徴です。

認知症による記憶障害は「直近のことがすべて思い出せない」点で、老化による物忘れとは異なります。例えば、老化による物忘れは、何を食べたかを思い出せなくなりますが、認知症による記憶障害は、食べたこと自体を忘れてしまいます。記憶障害だと、過去に経験したことをまるまる忘れてしまう場合もあるのです。

身近な家族やヘルパーを疑うことが多く、周囲の人間が精神的に追い込まれることも少なくありません。

 

見当識障害

日付や時間、自分の居場所、人との関係性を把握して理解する能力を「見当識」と言い、これがあやふやになるのが、見当識障害です。以下に、見当識障害の具体的な症状を挙げます。

 

【見当識障害の具体的な症状】

  • 今日の日付がわからなくなる
  • 自分の年齢を忘れる
  • 休日なのに仕事に行くことがある
  • 季節に合った衣服を着ることができない
  • 通り慣れた道で迷子になる

 

見当識障害になると、日付や時間、季節だけでなく、ついには身近な家族の存在さえも認識できなくなってしまいます。

 

実行機能障害

実行機能障害には、自分で計画を立てて行動する能力が低下するという特徴があります。実行機能障害の特徴は以下の通りです。

 

【実行機能障害の具体的な特徴】

  • 料理を並行して進められない
  • 料理の味付けが変わった
  • 使い慣れた家電の使い方がわからなくなる
  • 予算内で買い物ができなくなる
  • 薬の用法・用量を間違える

 

初期症状では、料理をレシピ通りに作れなくなったり、今まで使っていた家電製品の使い方がわからなくなったりします。症状が進行すると、着替えといった簡単な作業さえも困難になり、周りからの介助が欠かせなくなります。

 

理解力・判断力・集中力の低下

物事を正確に理解して適切に行動する能力や、物事に集中する能力が低下するのも、認知症の初期症状です。具体的には、以下に挙げたことが困難になります。

 

【理解力・判断力・集中力の低下による具体的な症状】

  • 話の理解に時間がかかる
  • テレビの内容についていけない
  • 横断歩道を渡るタイミングがわからない
  • 運転時のミスが増えた
  • 計算ミスが増えた
  • 浪費が目立つようになる
  • 趣味や家事に集中できなくなる

 

このように日常生活での小さなミスが増えていきますが、車の運転中のミスは、大きな事故につながりかねません。また、集中力の低下は、能動的な取り組みだけでなく、テレビや映画を長時間見るといった受動的な活動にも影響を及ぼします。

 

うつ状態

楽しかったことが楽しいと思えなくなる、記憶力の低下から人との会話を楽しめないといった症状が現れたら、うつ状態の可能性があります。精神的に落ち込みやすくなり、何をするにも面倒に感じるため、活力が失われます。以下がうつ状態が懸念される症状です。

 

【うつ状態の具体的な症状】

  • 疲れやすくなった
  • やる気が出なくなった
  • 身だしなみに気を遣わなくなった
  • 趣味への興味が薄れた
  • 食欲が低下した

 

このように楽しそうに生活している時間が減り、一人でふさぎ込んでしまう時間が増えたのであれば、注意が必要です。無気力・無関心な状態が進行し、しまいには他者との会話を避けるようになります。

一方で、「自分には価値がない」「生きている意味がわからない」といった自己否定は、認知症によるうつ状態ではありません。この場合、うつ病の可能性があるので、認知症のうつ状態とは異なるアプローチで治療する必要があります。

 

性格の変化

認知症が疑われる方には、大きな性格の変化が起きることも珍しくありません。以下に、認知症によってどのように性格が変化するのか、一例を挙げます。

 

【認知症による性格の変化】

  • 頑固になる
  • 怒りっぽくなる
  • 人への気遣いができなくなる
  • 自身の間違いを人のせいにする
  • 周囲との関係が悪くなる

 

これらの性格の変化は、主に前頭葉の機能が低下することで起こると言われています。前頭葉は人の感情をコントロールするはたらきがあるため、人が変わったようになるのです。

 

認知症の種類別・初期症状の違い

ひと口に認知症と言っても、実は種類があるのをご存じでしょうか?認知症には、大きく分けて、「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」の4種類のタイプがあります。

ここからは、それぞれの認知症の特徴と初期症状の傾向を解説します。

 

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が減り、脳が小さく委縮することで発症する認知症です。65歳以上の方にもっとも多く、新しいことが記憶できない、時間や場所がわからなくなるといった初期症状が現れます。病気が進行するにつれて、さまざまな症状が出ますが、進行はほかの認知症に比べて、比較的緩やかです。

 

脳血管性認知症

くも膜下出血や脳梗塞、脳出血の後遺症によって引き起こされるのが脳血管性認知症です。アルツハイマー型認知症の次に患う方が多く、記憶障害や見当識障害が起こるだけでなく、脳細胞の損傷によって身体麻痺や言語障害をともなうケースもあります。

脳の血管が詰まって血流が悪くなり、脳細胞の死滅や出血によりダメージ受けることが発症の原因です。

 

レビー小体型認知症

 レビー小体型認知症は、「レビー小体」という特殊なたんぱく質が、脳細胞の中で溜まることで発症します。夢と現実との区別がつかない幻視や、就寝中に大きな奇声をあげるといった行動異常が現れるのが特徴です。

パーキンソン病の症状である手の震えが目立つ場合は、レビー小体型認知症である可能性もあるので、早めに医療機関を受診してください。

 

前頭側頭型認知症

 脳の前頭葉や側頭葉に変性・萎縮が発生したのちに、症状が現れるのが前頭側頭型認知症です。万引きや交通違反を繰り返すといった、社会的なルールから逸脱した行動を取るような症状が特徴です。さらに、失語症や認知機能障害を併発するケースもあります。

ほかの認知症よりも、発症する年齢が比較的若く、症例も少ないため、医師でも診断が難しいとされる認知症です。

 

家族に認知症の疑いがあるときにとるべき行動

家族や身近な方に、認知症の疑いがあれば、本人だけでなく周囲の方にも不安が募ります。

次項から、適切な治療やサポートを受けるためには、周囲がどのような行動を取るべきなのかを具体的に挙げていきます。

 

医療機関に相談する

 認知症のチェックリストで当てはまる項目が多い場合は、まずはかかりつけ医に相談してください。

認知症は、早期発見と治療が非常に大切です。なぜなら、可能な限り早期の治療を受けることで、進行を緩やかにし、症状に合わせた生活環境を整備できるからです。

また、対処療法であるものの、前段階である軽度認知障害は早期の投薬で進行を抑えることができます。

本人には自覚症状がない場合も多いので、家族が日頃から気にかけてあげるのがなにより大切になります。

 

本人が病院に行きたがらないときの対処法

認知症が疑われる段階で、いざ受診となると、本人が躊躇することは多々あるようです。本人が病院に行きたがらない場合は、まずは無理に説得するのではなく、本人の自尊心を傷つけないようにそれとなく受診を勧めてみてください。

それでも行きたがらない場合は、以下のような窓口に相談することも可能です。

 

【認知症が疑われる場合の相談窓口】

  • 認知症疾患医療センター
  • 地域包括医療センター
  • 社会福祉協議会
  • 公益社団法人「認知症の人と家族の会」

自治体によって、名称が異なることもあるため、お住まいの地域の福祉担当課に確認するのがベターです。相談すれば、対応の仕方に関して的確なアドバイスをもらうことができます。家族だけで解決が難しい場合は、ぜひ活用してみてください。

 

今後のサポート体制について家族で話し合う

認知症と診断された方には、家族や身の回りの方のサポートが欠かせません。まずは、認知症の症状や対応方法を知り、できるサポートを家族間で話し合うことが大切です。

認知症は、医薬品によって症状を緩和させたり、進行を遅らせたりすることは可能ですが、残念ながら完治までは望めません。家族だけで100%サポートするのは、難しい部分があるため、ヘルパーといった介護サービスを利用し、無理なく継続的なサポートができるように努めましょう。

 

本人のために家族が注意すべきこと

認知症の方と接すると、コミュニケーションの不和や異常行動が原因でイライラすることも多いかもしれません。かといって、そのことを本人に指摘してしまうと、不安が助長され、これまでに述べたような症状や行動が悪化する可能性もあります。

次項からは、家族が認知症の方にできるサポートを具体的に解説します。

 

告知は医師と相談のうえ行う

認知症の疑いがある方に認知症と伝える場合は、医師と相談して本人ができるだけ傷つかない方法を取ることが一番です。

認知症の初期症状では、一人でふさぎ込んだり、自分には価値がないといったうつ状態に陥ったりするケースがしばしばあります。認知症を素直に受け入れるのは難しいことが多いため、本人に直接伝える際は、言葉を選ぶなどの配慮が求められます。

 

本人の気持ちに寄り添って接する

認知症の疑いがある方と接していると、イライラしてしまう場面も多いかもしれませんが、そこは、グッと我慢して本人に寄り添ってあげましょう。本人の意思ではなく、認知症という病気がそうさせてしまっていることを念頭に置くと、心にゆとりが持てるかもしれません。以下の表に、認知症の方と接するときに意識するべきポイントを挙げています。

 

【認知症の方と接する際のポイント】

症状 接し方のポイント
記憶障害 忘れたことや思い出せないことを責めない
見当識障害 本人の不安に寄り添う
実行機能障害 起きた出来事を否定しない

認知症に向き合うのは容易ではないので、忍耐力も必要です。相談相手として本人の不安を理解したうえで、互いが安心して生活できるようにサポートしましょう。

 

認知症を予防するために大切なポイント

ここまでは、認知症の方に対して、周囲の方がするべきことを解説しましたが、ここからは、認知症を予防するために意識したい大切なポイントを紹介します。

認知症を完全に予防する方法は、残念ながら確立されていませんが、予防するために大切なポイントはいくつか判明しています。実は、最近の研究から、認知症は生活習慣病と深い関わりがあると明らかになったのです。生活習慣病とは、「食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒等の生活習慣が、その発症や進行に関与する習慣」と厚生労働省が定義しています。具体的には、高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満などです。

認知症全体の6割を占めるアルツハイマー型認知症は、上記の生活習慣病が原因であることが指摘されています。また、高血圧や脂質異常症から動脈硬化が起こり、脳梗塞や脳出血を発症した結果、脳血管性認知症に至るケースも多いです。

生活習慣の見直しは、生活習慣病の予防だけでなく認知症の予防にも効果的なのです。ここからは、予防法を具体的に挙げていくので、参考にしてください。

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット「生活習慣病とは?」

 

ポイント①生活習慣病を治療する

前項で説明したように、生活習慣病はアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症との関連が指摘されているため、医師から診断された方は、まず治療してください。

特に認知症の発症リスクを高めてしまう生活習慣と言われているのは、喫煙と過度な飲酒です。喫煙者は非喫煙者よりも、約1.5~2倍も認知機能が低下しやすいと言われており、過度な飲酒は、脳が委縮して認知症になりやすいことがわかっています。

禁酒・禁煙とまでは言いませんが、何事もほどよく嗜む意識を持つことが大切です。

 

ポイント②栄養バランスの良い食事をとる

普段から高カロリーなものや塩分が高いものを好んだり、過度な飲酒が習慣化していたりする方は、自身の食生活を見直しバランスの良い食事へと改善しましょう。

大豆製品は、血中コレステロールや中性脂肪を低下させるはたらきがあり、野菜には、動脈硬化やアルツハイマーの原因物質を抑制する効果が期待できます。大豆製品なら納豆や豆腐、野菜なら特にアスパラガスやほうれん草、かぼちゃを積極的に摂取するのがおすすめです。

 

ポイント③運動の習慣をつける

日々の適度な運動は、血流が良くなることで、生活習慣病の危険因子を取り除き、脳の状態を良好に保つと言われています。神経細胞や認知機能にも良い影響を及ぼすため、継続的に続けることが大切です。

特にウォーキングや水中ウォーキングは、関節への負担が少なく継続しやすい有酸素運動です。起床後の散歩を習慣化する、一駅分歩く、階段を積極的に使うといった無理のない範囲から始めてみるのはいかがでしょうか?

 

ポイント④認知トレーニングをする

認知トレーニングで脳を刺激することは、認知症予防に非常に有効です。

人の脳のうち、特に前頭前野が活性化すると、老化スピードの抑制につながることが明らかになっています。前頭前野は、簡単な計算クイズやクロスワードパズル、語学学習、楽器演奏などで鍛えることが可能です。

いずれにせよ、新しいことへの挑戦は、脳に刺激を与え、認知症の予防につながります。これを機に、新しい趣味の幅を広げるのもよいかもしれませんね。

 

認知症のチェックリストで該当する項目があれば、早めに医療機関を受診する

今回は、チェックリストを用いて、認知症を解説しました。

認知症は、早期発見し、進行を遅らせることがなにより大切です。医療機関に本人が行きたがらない場合も、無理に説得するのではなく、それとなく勧めてあげるのがよいでしょう。また現在、認知症は予防できる可能性が高いことが明らかになっています。生活習慣病と診断されたことのある方は、普段の生活を見直すことから始めてください。

 

 

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