【藤宮峯子院長Vol.8】タンパク質と創薬について
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ルネクリニック札幌院 院長 藤宮峯子より【タンパク質と創薬について】コラムを配信致します。
エクソソームを電子顕微鏡の下で観察してから、私は特定のタンパク質の異常で病気の原因を説明する医学研究に疑問を持ち始めました。
医薬品の開発には、病気の原因となるタンパク質の発現をブロックする化合物が合成され薬として世に出ます。
一般的に、〇〇ブロッカーや〇〇抗体薬と呼ばれるものです。
病気の原因となるタンパク質をどのようにして特定するのかというと、
タンパク合成に関わる遺伝子をノックアウトした動物から生まれてくる個体が、人間の病気を発症するかどうかを調べるのです。
最近は革新的なノックアウト技術が発明され、簡単にノックアウト動物が作れるようになりました。
しかし、実際はノックアウト動物を作っても、必ずしも目的の病気を発症しないという事態がよく起こります。
この事は、我々の体で起こる病気は、単純に一つや二つのタンパク質の異常だけで起こるのではなく、
もっと複雑で複合的な原因で起こることを意味します。
一方で、我々の体を構成する細胞から放出されるエクソソームは、
直径数十nmから100 nmの小さな粒子の中に、メッセンジャーRNA、DNA、マイクロRNA、タンパク質など
情報伝達に関わる多くの因子が詰め込まれています。
エクソソームが細胞から放出され、近傍の細胞に取り込まれるか、
体液や血液に乗って遠方に運ばれ別の細胞に取り込まれて様々な作用を及ぼすのです。
これまで考えられてきたように、
タンパク質とその受容体という厳密な一対一対応(レセプターとリガンドの関係)で情報伝達をするだけではなく、
何もかも雑多に搭載した粒子を細胞間でやり取りしながら情報伝達をするという、
雑駁でつかみどころのない事を生体はやっていることが分かって来たのです。