認知症による徘徊とは?家族を守る正しい対策方法を紹介
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認知症のご家族がいる方のなかには、突然その姿が見えなくなったという経験がある方もいらっしゃるかもしれません。「見つけられなかったらどうしよう」「危険な目にあってしまうかもしれない」と不安になる前に、対策できる方法があれば知りたいものです。
今回は、認知症による徘徊の原因を、大切なご家族を守るための対策方法とともに紹介します。ご家族全員で穏やかに安心できる毎日を送りたい方は、ぜひご覧ください。
認知症による徘徊とは
徘徊とは、昼夜問わず、屋内外をあてもなく歩き回る行動のことです。認知症の症状の一つで、ご本人にとっては目的のある行動だと言われています。
しかし、屋外での徘徊には事故や怪我のほか、帰宅困難に陥るなど、さまざまな危険をともないます。特に、夜間の場合は、そのリスクが高まるだけではなく、同居されているご家族も安心して夜を過ごすことが難しくなるため、介護の負担が大きいですよね。
また、徘徊の末、行方不明となってしまう認知症の患者様も出ていることが、社会問題となっています。警視庁が発表している『令和4年における行方不明者の状況』では、「疾病関係」で行方不明となる方がもっとも多く、24,719人が該当するという結果が出ています。このうち、約18,000人が認知症または、その疑いのある方だとされており、その数は年々増加傾向にあることから、無視できない深刻な問題だと言えるでしょう。
参考:警察庁生活安全局人身安全・少年課『令和4年における行方不明者の状況』
【種類別】徘徊の原因
「認知症」とひと口に言っても、その種類によって現れる症状はさまざまです。そのため、徘徊の原因も認知症ごとに異なります。
ここでは、認知症の種類別に徘徊が起こる原因を解説します。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症の場合は、見当識障害と記憶障害による「不安」が原因で徘徊が起こります。
見当識障害とは、ご自身がいる場所や日付、人の名前などがわからなくなる認知症の中核症状のことです。一方で、記憶障害では、ご自身の経験のほか、直近の記憶がなくなってしまう症状が見られます。これらの影響で、周囲の状況を正確に判断できない焦りや不安を感じ、安心できる場所を探して徘徊につながるというわけです。
また、アルツハイマー型認知症による徘徊は、道に迷いやすいだけではなく、予想外に遠くまで行ってしまうケースも少なくありません。
脳血管性認知症
脳血管性認知症による徘徊は、集中力の欠如や、情緒不安定などの症状が現れる「せん妄」が原因です。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって脳内の神経組織が破壊されることで発症し、せん妄を引き起こすとされています。特に、夜になると注意力が低下し、記憶が曖昧になる「夜間せん妄」が多く、真夜中に徘徊するケースも見られます。
レビー小体型(しょうたいがた)認知症
レビー小体型認知症の方は、症状の一つである「幻視」が原因で歩き回ります。厳密に言うと徘徊とは異なりますが、存在しない人や物から逃げるような様子が、徘徊と見なされるのです。
レビー小体型認知症における幻視は、夜間に起こりやすいため、ご本人が就寝したあとは、定期的に様子を確認すると安心です。
また、レビー小体型認知症には、目の前にいる家族が偽物だと主張する「カプグラ症候群」とよばれる妄想の症状があります。これを発症した場合、ご本人にとっての本物の家族を探し求め、徘徊するかもしれません。
認知症の患者様が徘徊する理由
徘徊は、ご本人にとって意味のある行動だとされていますが、具体的にはどのようなことがきっかけで起こるのでしょうか。
ここからは、認知症の患者様が徘徊する4つの理由を解説していきます。
理由①立ち上がった目的を忘れる
認知症の患者様が徘徊する理由には、立ち上がった目的を忘れてしまうことが挙げられます。たとえば、「トイレに行きたい」「お腹が空いた」という身体的な違和感がきっかけで立ち上がっても、その目的や行こうとしていた場所を忘れてしまいます。
このような場合は、原因となっている身体的違和感を取り除くために、トイレや食事を促すと、気持ちが落ち着くかもしれません。
理由②心理的なストレスを感じる
日々の生活のなかで感じる心理的なストレスや不安も、認知症の患者様が徘徊する理由の一つです。認知症の方は環境が変化する際に、ストレスや不安を感じやすい傾向にあります。ご本人の心が疲弊してしまった結果、「落ち着ける場所に行きたい」と外に飛び出してしまうのです。
また、これまで当たり前にできていたことができなくなることも、ストレスや不安を感じる原因となります。
理由③過去の習慣を再現しようとする
認知症の患者様の徘徊では、仕事や子どもの送り迎えなど、過去の習慣を繰り返そうとしていることもあります。
過去の習慣を再現しようとするのは、現状を忘れ、若いときと同じように生活していると思ってしまうからです。そのため、毎日決まった時間に外出したり、料理を作ったりと、落ち着きがない状態が見られます。
理由④ご自身の家に帰りたいと思う気持ちがある
ご自身がいる場所を自宅だと認識できず、「家に帰りたい」という気持ちがあることでも、徘徊するケースがあります。
これは、見当識障害によってご自身の居場所がわからなくなっている、記憶障害によって直近の記憶が抜け落ち、昔の記憶がよみがえることが原因として挙げられます。つまり、自己意識が若返るため、ご本人の実家や昔住んでいた家に帰ろうとするのです。多くの場合、思いのほか遠くまで歩いてしまったり、帰り道がわからなくなったりして、徘徊につながります。
認知症による徘徊の対策方法
認知症の方がいるご家族のなかには、「徘徊の対策はなにをしたらよいかわからない」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、大切なご家族が行方不明にならないための、徘徊対策のポイントを9つ紹介します。
対策①玄関の鍵やドアに工夫を施す
簡単に外に出て行ってしまうのを防ぐには、玄関の鍵やドアに工夫を施すのが有効です。たとえば、ご本人の手が届きにくいところに鍵をつけたり、玄関にセンサーを設置したりする方法があります。
ただし、「家から出さない」ではなく、「外出を見守る」工夫を心がけましょう。家に閉じ込めるような対策は、ご本人の怒りにつながり、かえって徘徊のリスクを高めてしまうこともあり得ます。
そこで、通常通り施錠をして外出までの時間を稼ぐほか、外出を察知できるように、玄関に限らず、部屋のドアにも音が鳴るものをつけるのがおすすめです。
対策②服や持ち物に名札をつける
ご本人の服や持ち物に名札をつけると、外に出て行ってしまっても、見つかる可能性が高まります。名札には、氏名と住所、連絡先の電話番号を記載しておきます。
また、名札は、ご本人が気にならないかつ、わかりやすい場所につけましょう。目立つ箇所に名札があると、ご本人が嫌がる可能性があるだけではなく、不特定多数の方に個人情報を見られることも考えられます。そのため、洋服の裾や裏にアイロンプリントなどで貼りつけるのがおすすめです。
洋服に名札をつけるのに抵抗がある場合は、ご本人が外出時に必ず使う杖や帽子などのアイテムにつけるのがベターです。
対策③GPSを活用する
ご本人の位置を正確に把握するためにGPSを活用するのも、徘徊対策の一つです。
GPSをつけておくと、ご本人の徘徊を確認した際、ご家族に情報が発信されます。すぐにスマートフォンや携帯電話から位置情報を確認できるので、早期発見が期待できます。また、徘徊していないときでも、ご本人の居場所がわかるため、ご家族も安心して過ごせるはずです。
GPSには、衣服や靴につけられる小さいものから、そのまま使えるシューズタイプまで、さまざまな種類があります。ご本人の状況に合わせてGPSのタイプを選択し、常に身につけさせることで、行方不明になるリスクを減らせます。
対策④徘徊しようとしたときに気をそらさせる
徘徊の気配を感じたら、ご本人の気がそれる言葉をかけることも、有効な対策の一つです。
たとえば、ご本人が「自分が本来帰るべき家がある」と思い込んで、外に出ようとしている場合は、無理に止めず、あくまでも相手の話に合わせた言葉をかけるとよいでしょう。ご本人の気をそらすことができると、外に出ようとしたことを忘れ、徘徊を未然に防げる可能性があります。
対策⑤近所の方や地域と連携する
徘徊対策としては、近所の方や地域との連携も欠かせません。必ずしも、ご家族が見ているタイミングで徘徊するとは限らないからです。
近所の方や頻繁に立ち寄るお店の方、交番などに、認知症の家族がいて、徘徊する可能性があることを事前に伝えておきます。一人で歩いているのを見かけたら、知らせてもらうようにお願いすれば、もしものときでも早期発見につながるはずです。
また、各自治体では、地域全体で高齢者の徘徊防止に向けた取り組みとして、見守りネットワークサービスを提供しています。このサービスに登録すると、ご家族が徘徊した際、警察とともに地域の生活関連団体等が捜索に協力してくれます。
対策⑥トイレの場所をわかりやすくする
家の中での徘徊が多い場合は、トイレの場所をわかりやすくしてみましょう。
家の中で徘徊すると、階段や段差で転倒するリスクがあるだけではなく、部屋数によっては、トイレを見つけるまでに時間がかかります。トイレを探すうちに、失禁するかもしれないため、ご本人だけでもトイレまでの手がかりを掴める工夫が必要です。
たとえば、トイレのドアにひと目でわかるサインを貼るほか、夜間にトイレまでの道のりに明かりをつけておくことなどが挙げられます。
また、ご本人の日々の生活習慣を把握し、排泄を促すような声をかけるのも、家の中での徘徊を防ぐ方法として有効です。
対策⑦日中に適度に運動させる
ご本人の満足感を高めることから、日中に適度に運動させるのも徘徊対策となります。
認知症の方が遠くまで徘徊する背景には、身体が元気で、活動できるだけのエネルギーがあることが挙げられます。昼間に動かない時間が多いほど、夜でも動ける元気が残り、徘徊につながってしまうというわけです。日中にラジオ体操や散歩などで身体を動かし、適度に疲労を感じると徘徊の衝動を抑えられます。
また、身体を動かすと睡眠の質が向上するため、夜間の徘徊を防止できます。
対策⑧生活リズムを整えさせる
ご本人の生活リズムを整え、体調不良を防ぐことも、徘徊対策として効果的です。
便秘や腰痛などによる身体の不快感や、眠れないことによるストレスがあると、対処法が分からず、徘徊につながる可能性があります。そのため、早寝早起きにくわえて、栄養バランスのとれた食事を3食きちんと摂らせ、ご本人の健康的な生活を見守ってあげてくださいね。
特に、睡眠時間をしっかり確保すると、認知症の進行を遅らせることも期待できます。生活リズムを整え、ご本人が心身ともに落ち着けるような環境づくりをしてあげましょう。
対策⑨薬を正しく服用させる
認知症の進行を遅らせたり、精神状態を整えたりする薬は、正しく服用させることが大切です。
認知症の薬物療法に用いられる薬には、抗うつ薬や抗認知薬などがありますが、これらの成分には、多くの場合、せん妄の副作用があります。また、高齢者の使用を推奨していないものもあるため、薬の服用で症状が悪化してしまうことも考えられます。
薬を飲んだ記憶が曖昧になり、飲み忘れや飲みすぎる可能性もあるので、ご家族が日々、薬を管理してあげてくださいね。
認知症のご家族が徘徊した際にできる対応のポイント
対策していても、徘徊は思わぬタイミングで起きてしまいます。実際に、ご家族が徘徊した際はどのように対応したらよいのでしょうか。
ここからは、ご家族が徘徊したときの対応のポイントを3つ紹介します。
ポイント①本人の言動を否定せず傾聴する
徘徊は目的のある行動ですので、否定せず、ご本人の言葉に耳を傾けてあげることが重要です。
徘徊している理由を聞き出し、ご本人が何をしたいのかを明確にすれば、上手に対応できるはずです。もし理由がわからなくても、ご本人の気持ちに共感し、寄り添うことで解決のヒントがきっと見つかります。
しかし、ご家族が徘徊した際は、心配や焦りから、叱ったり話を受け入れられなかったりすることもありますよね。
認知症の場合、出来事の記憶は残りづらいものの、「怖い」「嫌だ」というネガティブな気持ちは心に残りやすい傾向にあります。誰でも、理由もわからずに叱られる環境や、話を聞いてくれない人のもとにはいたくないと思うものです。ネガティブな気持ちを感じるほど、徘徊が多くなる可能性もあるため、話を聞くときは、ご本人の話につじつまを合わせることを意識してみてください。
ポイント②無理に引き止めない
ご家族が徘徊した際は、無理に引き止めようとせず、自由に歩かせてあげましょう。
徘徊を無理に止めようとすると、感情的になったり逃げ出そうとしたりする可能性があるからです。ご本人が思うままに歩かせてあげることで、徘徊する気持ちが落ち着くかもしれません。
また、ご家族が徘徊しているあいだは、怪我や事故のリスクを軽減するためにも、一緒に歩いてあげてくださいね。付き添うことで、必ず立ち寄るお店や通る道を知るきっかけにもなります。
徘徊を止めるのは困難ですから、「徘徊によるリスクを減らそう」という気持ちで対応することが望ましいです。
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ポイント③行方不明になったら警察に届け出る
ご家族が外に出てしまい、行方不明になったと判断したら、すぐに警察に届け出てください。早い段階で捜索願を出しておけば、発見される確率も高くなります。
なかには「あまり騒ぎにしたくない」「恥ずかしい」という思いで、警察を頼ることに抵抗がある方もいらっしゃいますよね。しかし、ご家族が行方不明になってから時間が経つほど、発見される確率が低くなり、最悪の場合は命を落としてしまうことも考えられます。
認知症による徘徊は、恥ずかしいことではありません。大切なご家族を守るためにも、ためらわず届け出ることが大切です。
認知症による徘徊はご本人にとって目的のあるもの。寄り添い、見守る対策が大切
今回は、認知症による徘徊の原因と、その対策方法を解説しました。
徘徊は、記憶障害や判断力の低下など、認知症の種類によって原因が異なります。また、徘徊にはご本人なりの理由があるため、それをきちんと理解してあげることが重要です。
徘徊対策は、徘徊を止めようとするのではなく、「リスクを回避するための対策」という意識をもって行うとよいでしょう。
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① 治療方法 治療薬を鼻腔内に1滴ずつ垂らし、迅速に脳内に薬を届ける治療法です。 痛みはなく、仰向けの状態で30分程度の治療時間を要します。 ② 副作用リスク ③ 連絡先 ④ 費用 ⑤ 入手経路 ⑥ 効能に関する国内の承認機器・薬剤の有無 ⑦ 安全性に関する諸外国の情報 ⑧ 未承認である旨 ⑨ 未承認薬・機器 |