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認知症の検査の種類を詳しく解説

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認知症の疑いがある家族に検査を受けさせたいものの、具体的にはどのような検査を行うのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実は、認知症検査は多種多様で、その方に適した方法は認知症の種類によって異なります。

 

そこで本記事では、認知症検査の種類を徹底解説します。

最後まで読んでいただければ、事前に知識を得ることができ、医療機関へのスムーズな受診が叶うでしょう。

 

認知症とは

 

認知症の検査方法を知る前に、そもそも認知症とはどのような病気なのかをおさらいしましょう。

認知症という病気を改めて知ることで、後述する検査内容への理解が深まります。

 

認知機能という、脳の記憶や判断を司る機能が低下することによって引き起こされるのが、認知症です。

症状が進行することで日常に継続的な支障をきたし、自立して生活するのも難しい状態になります。

特に顕著に現れる症状が、記憶障害です。

初期症状では、加齢による物忘れと見分けがつきにくいため、症状が進行してから、認知症と診断されるケースも散見されます。

過去の体験を丸ごと忘れる、会話のつじつまが合わないといった症状がみられた場合は、早急に病院を受診してください。

 

認知症は、早期発見と進行抑制が、その後の日常生活に関わるほど大切になるのです。

 

認知症の種類

 

ひと口に認知症といっても、種類があるのはご存じでしょうか?

以下の表で、4つの認知症の詳細をそれぞれ解説します。

 

認知症の主な4種類

アルツハイマー型認知症
  • 脳の中にアミロイドβというたんぱく質が溜まり、脳の神経が変性することで発症する
  • 記憶障害・妄想・徘徊の症状が現れる
  • 全認知症患者のおよそ70%が発症している
脳血管性認知症
  • 脳梗塞や脳出血の後遺症により、脳に十分な血液が行き渡らず、脳実質が壊死することで発症する
  • 意欲低下・言語障害・歩行障害が顕著に現れる
  • 患者数は全体の約20%にあたる
レビー小体型認知症
  • レビー小体という特殊なたんぱく質によって、脳の神経が破壊されることで発症する
  • 幻想・妄想・手足の震えといった、パーキンソン症状が目立つ
前頭側頭型認知症
  • 脳の前頭葉や側頭葉の委縮により、血流が阻害されることで引き起こされる
  • 徘徊や異常行動、社会的ルールを守れないといった症状が現れる
  • 全認知症のおよそ1%と患者数は少なく、難病に指定されている

 

どの認知症も進行すると、日常生活が困難なほどの症状が出ます。

 

参照元:厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について」

 

認知症検査の内容

ここからは、いよいよ認知症検査の内容を深掘りします。

 

なお、認知症の症状は人によってさまざまなので、問診と複数の検査を組み合わせてスクリーニングを行い、原因を特定するのが一般的です。

そのため、以下で説明する検査をすべて行うわけではありません。

 

①問診

 

検査の前に、専門医が本人や家族から普段の生活の様子を聞き取り、症状の診察を行います。

 

たとえば、以下のような内容を聞かれます。

 

認知症検査の問診で聞かれる質問の例

  • 症状の状態
  • 症状が気になりだした時期
  • 生活への支障
  • 家族構成や生活環境の変化
  • これまでに患った病気
  • 現在治療中の病気

 

この問診をもとに、以下で紹介するさまざまな検査方法から、本人の状態に合った検査が実施されます。

なお、症状が進行していると本人が答えられない可能性もあるので、家族や身の回りの方は同行するだけではなく、代わりに答えられるように準備しておくとよいでしょう。

現在治療中の病気がある方は、服用している薬を聞かれることがあるので、「おくすり手帳」を持参すると安心です。

 

②身体検査

 

問診が終わると、一般的な健康診断や人間ドッグと同じように、身体検査を行います。

認知症を引き起こす、別の病気を発症しているかどうかを調べるためです。

 

一般的に、以下のような検査が行われます。

 

認知症の身体検査の項目

検査項目 検査内容
血液検査・内分泌検査 認知症症状につながる可能性のある、甲状腺機能低下やビタミン欠乏が起きていないかを検査する
尿検査 尿の中にあるさまざまな物質を検査し、身体に異常がないかを調べる
心電図検査・胸部X線 心臓や肺に異常がないかを検査する

 

このように、すべての検査は、認知症を診断するために必要な検査として行われます。

この検査を終えると、いよいよ認知症検査に入ります。

 

③認知症検査

 

認知症検査は、「神経心理学的検査」と「脳画像検査」の2つに分類されます。

いずれも、認知機能を客観的に調べるための検査です。

 

以下で、それぞれの具体的な検査の種類を紹介します。

 

神経心理学的検査

 

神経心理学的検査は、医師や心理士からの質問に回答する形式で行う検査です。

回答が、各検査に設けられた基準を下回ると、認知症の疑いがあると判断されます。

 

ただし、この検査は緊張や不安の影響を受けやすく、正しく検査できないケースもあるため、あくまで認知症を判断する資料のひとつとして扱います。

 

ミニメンタルステート検査(MMSE)

 

認知機能テストのなかでも、世界的に広く普及し、国内でも多く使用されているのが、ミニメンタルステート検査です。

 

1975年にアメリカで誕生したこちらの検査は、10~15分の制限時間内で、計算力や言語能力、図形描写力が問われます。

30点満点中24~27点であれば軽度認知症、23点以下であれば認知症の疑いが強いと判断されます。

 

精度は高く、優れた検査方法として評価されていますが、このあと紹介する長谷川式スケールよりも難易度が上がることは覚えておきましょう。

また、1つの設問に10秒以上かかると次の設問に移行するため、プレッシャーを感じやすいかもしれません。

 

参照元:一般社団法人日本老年医学会「認知機能の評価法と認知症の診断」

 

Mini-Cog

 

Mini-Cogは、3つの単語を覚えたあとすぐに思い出せるか、簡単に時計を描けるかといった能力を測るテストです。

2分以内という驚異的な早さで完了するにもかかわらず、ミニメンタルステート検査と同等の精度があるとされています。

 

改訂 長谷川式スケール(HDS-R)

 

長谷川式スケールは、名前や生年月日、年齢、人間関係などの設問に、患者が口頭で回答する認知機能テストです。

 

精神科医の長谷川和夫氏が開発したことから、このようによばれており、1991年に改訂されたのち、現在の「改訂 長谷川式スケール(HDS-R)」として普及しています。

所要時間は10~15分ほどで、30点満点中20点以下であれば認知症の可能性が高いとされます。

ただし、その日の体調や気分といったコンディションに、検査結果が左右されやすいことから、一つのテスト結果だけで認知症と診断されるわけではありません。

一般的に、ほかの検査の結果も組み合わせて、判断されます。

 

MoCA

 

対面で面接のように行い、視空間や言語、記憶、注意力、復唱、抽象概念、見当識といった多くの領域の認知機能を一度に測るのがMoCAです。

 

MoCAは軽度認知障害の検出に非常に優れています。

軽度認知障害のなかでも、糖尿病患者に顕著に現れる遂行機能障害は、長谷川式スケールやミニメンタルステート検査では、見出すのが難しいという側面があります。

そこでMoCAを実施すれば、遂行機能障害を適切に診断できるので、認知症の早期発見につながるのです。

 

参照元:日本内科学会「認知症を考慮した高齢者糖尿病の治療」

 

時計描画テスト(CDT)

 

指定された時刻の時計を絵に描かせて、前頭葉・側頭葉・頭頂葉が正常に機能しているのかを測る検査が、時計絵画テストです。

時計の外円が極端に小さかったり、数字や針を正しい位置に配置できなかったりすると、認知症の疑いがあると判断されます。

 

検査者と面と向かって行う検査ではないため、患者の抵抗感が少なく、リラックスして受けられるといわれています。

 

ウェクスラー記憶検査(WMS-R)

 

ウェクスラー記憶検査は、記憶力だけではなく集中力や注意力も測る検査です。

 

言語と図形の問題で構成され、言語性記憶と視覚性記憶の状態を調べます。

認知症の判断精度が高く、国際的に採用されている検査ですが、所要時間が長いのが欠点です。

そのため、体力のない高齢の方は、最後まで検査を受けることが困難な場合があります。

 

ABC認知症スケール(ABC-DS)

 

日本の研究者が考案したABC認知症スケールは、認知症の重症度を評価することを目的に開発されました。

 

日常生活での行動や心理状態などを、本人ではなく家族から聞き取り、9段階で判断するのが特徴です。

また、検査者に特別な資格や訓練は不要で、医師以外の医療従事者も検査を行えます。

約10分という短時間で評価できるので、患者の負担を抑えられます。

 

アルツハイマー病評価スケール(ADAS)

 

認知症と診断されたあとに、症状の重症度をさらに細かく測るのが、アルツハイマー病評価スケールです。

 

見当識障害や記憶障害をメインに、11項目の問題で認知機能を評価します。

所要時間は1時間と長いので、対象となるのは、認知症と診断されてからさらに詳しい進行具合を測らなければならない方のみです。

 

高齢者うつスケール(GDS)

 

高齢者うつスケールは、患者が認知症にともなううつ状態であるかをチェックするために行います。

 

口頭で質問される内容に、患者はイエスかノーのみで回答するのが特徴です。

質問は11項目あり、記憶に関する質問のほかに、自分の今の気持ちについての質問が多くを占めます。

 

DASC-21

 

DASC-21は、21項目の質問から認知機能障害と生活機能障害の程度を測り、認知症の診断と重症度の評価を同時にする検査です。

 

検査は5~10分程度の短時間で実施でき、評価法は4段階で行います。

簡単な講習を受講すれば、医師や医療従事者ではなくても検査が可能です。

 

脳画像検査

 

脳画像検査では、撮影した脳の状態を診察し、萎縮度や血流の低下といった所見がないかを調べます。

 

「形態画像診断」という脳の形状を見るCT・MRI・VSRADと、「機能画像診断」という脳の働きを調べるSPECTに分けて検査します。

神経心理学的検査を受けたあと、さらに詳しく調べるために組み合わせて実施されるのが一般的です。

 

CT

 

X線を用いるCTは、コンピューターで断層撮影を行う検査です。

 

頭部を輪切りにしたような画像が撮影できるため、脳の外傷や脳出血を判断できます。

認知症検査以外でも幅広く用いられる検査なので、みなさんのなかにも一度は受けたことがある方がいらっしゃるかもしれません。

 

MRI

 

電磁気を用いて頭部を撮影するのがMRIです。

磁石でできた筒の中に入り、臓器や血管に所見がないかを調べます。

 

脳梗塞や脳腫瘍、脳出血の有無がわかり、発症時期を推測可能です。

 

VSRAD(ブイエスラド)

 

VSRADは、MRIの結果データを用いて、アルツハイマー型認知症の原因を特定する診断ソフトです。

コンピューターで照合・解析し、検査します。

 

特筆すべきは、認知症初期に萎縮がみられる、記憶を司る海馬の萎縮度を調べられる点です。

萎縮度が4段階中3段階以上であれば、アルツハイマー型認知症の疑いが高いと診断されます。

 

SPECT(スペクト)

 

微量の放射性物質を含む薬を注射し、体内でその薬の動きを撮影して、脳の血流量や臓器の働きをみる検査をSPECTといいます。

 

この検査は、脳の血流が低下している部位を特定し、低下度合いを解析して、認知症の診断に役立てます。

 

認知症検査を受ける際のポイント

 

認知症は、一般的にどうしてもネガティブなイメージがあり、本人だけではなく周囲の方もストレスを感じてしまう病気です。

偏った考えから、検査も気乗りせず、診察を後回しにしてしまう方も多数いらっしゃいます。

しかし認知症は、早期発見と早期治療が鍵となるので、早めに受診したほうが本人のためになるのです。

 

以下でお伝えするポイントを留意して、認知症に対する不安や負担を減らしましょう。

 

①認知症について心構えを持つ

 

認知症を正しく理解し、心構えを持つのは非常に大切です。

なかには、認知症検査に不安を抱いたり、抵抗を感じたりしている方もいらっしゃるかもしれません。

認知症について正しい知識を養えば、過度にネガティブなイメージを払拭できます。

その結果、リラックスした状態で検査に臨むことができ、それによって診断結果の精度が高まる可能性もあります。

 

また、本人だけではなく、家族や周囲の方も認知症について理解すれば、お互いのストレス緩和にもつながるので、前向きに行っていきましょう。

 

②介護や治療の方針を考えておく

 

認知症と診断されたときを想定して今後の方針を考えておくのは、のちの人生設計を考えるうえでも損はありません。

 

認知症が進行するにつれて、日常生活を送るのも、介助者がいなければ困難を極めます。

したがって、家族に治療方針を共有し、誰が介助するのか、または介護を依頼するのか、といった今後の生活について話し合うのが大切です。

 

また、介護サービスには、訪問型や通所型などさまざまな種類があります。

介護を依頼することを決めた場合は、事前に調べて本人に合った介護サービスを選択しましょう。

介護者といった第三者と触れ合うことで、症状が緩和し、本人にとってメリットが生まれることもあります。

今後の生活や介護の方針を決めておくことは、早いに越したことはありません。

 

③家族が同行する

 

検査を受けるときや結果を聞くときは、家族や信頼できる方が付き添うのをおすすめします。

 

認知症と診断された際に、本人がショックを受けてしまい、医師の説明が十分に理解できなかったということが起こりかねないからです。

「何も覚えていない……」というシチュエーションを避けるためにも、家族や周囲の方が同行して、一緒に説明を聞くのがよいでしょう。

 

また、認知症と診断されたときに、原因を探って自分たちを責める必要はありません。

今後の治療方針を医師と相談して決めていきましょう。

 

④セカンドオピニオンも活用する

 

検査や診断内容に納得がいかない場合は、セカンドオピニオンを検討するのもひとつの手です。

 

認知症の診断は難しく、軽度の認知症であれば、脳画像検査で明確に異常がみられないこともあります。

その結果、「認知症を見逃される」「種類を間違われる」「そもそもほかの疾患だった」などといった誤診が起こりうるのです。

 

また、診断内容が納得できないときだけではなく、主治医の治療方針に納得できない場合もセカンドオピニオンを検討する理由になります。

なかなか言いにくいかもしれませんが、正直にセカンドオピニオンを受けたい趣旨を伝えてください。

これまでの検査結果などの情報を次の医療機関に提供してもらえます。

 

少しでも腑に落ちない場合は、積極的にセカンドオピニオンを検討しましょう。

 

認知症検査を受けるメリット

 

認知症は早期に発見し、できるだけ早く治療するのが何より大切です。

 

認知症の場合、脳の変性した部分やダメージを受けた部分は回復せずに、日々進行します。

つまり発見が遅れると、そのぶん悪化してしまうということです。

特に高齢の方は、自覚症状があるにもかかわらず「加齢のせいだ」と受診を先延ばしにする方も多くいらっしゃいます。

早期発見し治療を行うことで、初期段階で症状を抑え、今後の進行を緩和できる可能性が上がります。

 

また、認知症ではない類似した別の疾患のケースも考慮しなくてはなりません。

特に「慢性硬膜下血種」は、脳と頭蓋骨のあいだに血液が溜まる病気で、認知症と似た症状がみられます。

 

認知症は、早期発見・治療ができれば、重篤化を防ぎ、認知機能の改善も図れます。

 

本人が認知症検査を受けたがらない場合の対処法

認知症は早期発見が要になることを、家族がいかに理解していても、肝心の本人が認知症だと頑なに認めない場合は、医療機関への受診を断固拒否するケースがあります。

 

以下で、受診を促すための対処法をまとめます。

 

本人の気持ちを尊重する

 

認知症であることを受け入れたくない気持ちから、不安を抱えて、精神的に敏感になっている可能性があります。

大切なのは、本人の気持ちを理解して、「否定しない」「怒らない」ことです。

 

また、「認知症だよ、病院へ行こう」と直接言うのではなく、「〇〇について忘れていたよね」というように、今の状態や症状について具体例を挙げて優しく伝えてみましょう。

その結果、自分の症状をあまり抵抗なく認められることがあります。

 

第三者に相談する

 

家族の前では甘えが出たり、意地を張ってしまったりする方もいるので、この場合は、第三者から受診を勧めてもらうのも効果的です。

たとえば、本人の親しい友人といった、身の回りの信頼している人に勧めてもらうのがよいでしょう。

 

また、居住地の市区町村に設置されている「認知症初期集中支援チーム」の在宅診断を受けるという手もあります。

認知症初期チームは、認知症学会が定める専門医や保健師、看護師などの専門職によるメンバーで構成されており、家庭に訪問して認知症に対するサポートを行います。

 

詳しくは、お住まいの地域の福祉課や地域包括支援センターにご相談ください。

 

認知症の検査方法を把握し、不安を緩和できたら、早めに医療機関を受診しよう

 

今回は、認知症の検査方法を詳しく解説しました。

 

認知症は、早期に発見し治療を始めることができれば、進行を緩やかにできます。

本人が症状に気づいていないことも多いので、家族や周囲の方が気にかけて受診を促すのも大切です。

その際に、認知症の検査方法を事前に把握できれば、病院を受診する際の不安を緩和できるでしょう。

 

ルネクリニックhttps://renee-clinic.jp/)では、「再生医療が認知症に有効である」という治療方針を掲げています。

認知症の研究に長年携わってきた院長を筆頭に、再生医療のプロがみなさまに合った治療をご提案します。

本人のみならず、ご家族にも寄り添った丁寧な治療をお約束いたしますので、ぜひ当院へご相談ください。

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