認知症の方が記憶を忘れる順番は?発症の原因と対策も解説
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年齢を重ねて物忘れが多くなると、「認知症の症状なのでは……?」「急に家族のことを忘れたらどうしよう……」と不安になりますよね。
認知症によって記憶を忘れる順番には、ある程度決まりがあります。
これを知っておくことで、症状が現れても冷静に対応できるでしょう。
そこで本記事では、認知症の方が記憶を忘れる順番や、発症の原因と対策を解説します。
加齢に伴う物忘れにお困りの方は、ぜひ最後までご覧ください。
認知症の方が物忘れを起こす原因
認知症における物忘れは主に、大脳にある海馬の神経細胞が衰えることによって引き起こされるもので、“記憶障害”ともよばれます。
人は何かを記憶するとき、記銘・保持・再生という3つの段階を踏みます。
しかし、認知症が発症し海馬の神経細胞が衰えると、これらの機能がはたらかなくなってしまうのです。
また、後述する手続き記憶のように小脳で保持される記憶も存在し、これも認知症が進行すると忘れてしまう場合があります。
認知症の進行に伴って忘れる記憶
認知症によって忘れる主な記憶は、以下の6つです。
一つずつ、確認していきましょう。
①即時記憶
即時記憶とは、数秒~数分以内の短い時間のみ覚えている記憶のことです。
この記憶を失うと、自分が今何をしているのかを認識できなくなります。
即時記憶を忘れることによって起こる異変の例
- 何度も同じ質問を繰り返す
- リモコンの置き場所がわからなくなる
- 今日の日付がわからなくなる
即時記憶を忘れるのは、認知症の初期に見られる症状です。
人によっては何かを忘れていることすら認識できず、認知症だと気づかないケースもあります。
②近時記憶
近時記憶は、数日間保持される短期的な記憶です。
これには、一度忘れてもほかの記憶をたどって思い出せるという特徴があります。
近時記憶を忘れることによって起こる異変の例
- 数日前に何を食べたのか思い出せなくなる
- 以前に買った商品をもう一度買ってしまう
- 昨日の天気が思い出せなくなる
近時記憶を忘れるのも、即時記憶の喪失と同様に、認知症の初期に見られる症状です。
通常では考えにくいミスを起こすなど、自分でも発症を認識しやすい段階です。
日常生活に大きな支障をきたすことは少ないですが、上記のような異変があった場合には、認知症を疑いましょう。
③遠隔記憶
数日~数年にわたる中・長期的な記憶は、遠隔記憶とよばれています。
遠隔記憶を忘れることによって起こる異変の例
- 数年前に旅行でどこに行ったのか思い出せなくなる
- 結婚していることや子供がいることを忘れてしまう
- 自分が卒業した学校の名前を思い出せなくなる
遠隔記憶を忘れると、周囲との会話で明らかにつじつまが合わない場面が多くなります。
認知症になった本人も不安を感じやすくなるため、家族や友人のサポートが必要です。
④意味記憶
物事や言葉の意味に関する記憶が、意味記憶です。
これに障害が起こると頭に浮かんだイメージや言葉を表現するのが困難で、「あれ」「これ」といった抽象的な表現を多用するようになります。
意味記憶を忘れることによって起こる異変の例
- 信号の色の意味を理解できなくなる
- 相手の話している言葉が理解できなくなる
- 食べ物を見てもそれがなんなのか思い出せなくなる
意味記憶には、上記のような一般常識も含まれるため、無意識のうちに周囲に迷惑をかけてしまうおそれがあります。
忘れる内容によっては意志疎通も図れなくなり、日常生活を送ることですら困難になってくるでしょう。
⑤エピソード記憶
エピソード記憶とは、自分の体験に関する記憶のことを指します。
エピソード記憶を忘れることによって起こる異変の例
- 食事したことを忘れてしまう
- 数年前に旅行に行ったことを忘れてしまう
- >介護施設に来たことを忘れて自宅に帰ろうとしてしまう
「今朝食べたものを思い出せない」というのは単なる物忘れかもしれませんが、朝食をとったにもかかわらず「今日は何も食べていない」と話していたら、認知症のサインです。
エピソード記憶を忘れると、自分の認識や記憶に自信をもてなくなると同時に、症状の進行に不安を抱くようになります。
会話のなかでエピソード記憶の齟齬を指摘され、初めて認知症を自覚したという方も少なくありません。
⑥手続き記憶
手続き記憶とは、今までの経験によって蓄積された、技能や記憶のことです。
手続き記憶を忘れることによって起こる異変の例
- 自動車や自転車の運転の仕方を忘れてしまう
- 着替えの仕方がわからなくなる
- キーボードの打ち方がわからなくなる
ここまでに紹介した記憶が大脳の海馬で保持されているのに対し、手続き記憶は小脳で保持されています。
長い年月をかけて蓄積されたものであるため、ほかの記憶に比べて保たれやすく、一度忘れても思い出しやすいのが特徴です。
ただし認知症が進行すれば、手続き記憶にまで支障をきたす可能性があります。
その段階まで症状が悪化した際は、今まで以上に注意が必要です。
認知症の発症に伴う見当識障害とは
見当識障害とは、自分が置かれている状況を認識・理解する能力が損なわれる状態のことです。
これは記憶障害とともに現れる症状で、認知症を代表する障害の一つです。
ここからは、見当識障害によって認識できなくなるものを3つ紹介していきます。
時間の見当識
時間の見当識とは、日付や四季、年齢などを認識する感覚のことです。
これに障害が起こると、時間を正しく認識していないような言動が、たびたび見られるようになります。
時間の見当識障害によって起こる異変の例
- 真冬に薄着で外に出ようとする
- 朝と夜の区別がつかなくなる
- 自分や他人の年齢がわからなくなる
日付の間違いや、普段あまり会わない人物の年齢を忘れるといった異変は、ただの物忘れとして済まされてしまうかもしれません。
ただし上に挙げた一つ目の例のように、健康や命を脅かす行動をとってしまう可能性もあるため、周囲の人間がいち早く気づいてあげる必要があります。
また、目につきやすい場所にカレンダーを置いたり、予定表を作ったりするなど、時間の見当識を失わないようにする工夫も大切です。
人物の見当識
人物の見当識は、他人や自分の、顔と名前を認識する感覚です。
人物の見当識障害によって起こる異変の例
- 友人と会っても誰かわかなくなる
- 家族と会っても誰かわかなくなる
- 自分が誰かわからなくなる
交友関係の薄い人物から順番に認識できなくなり、最終的には自分でさえ誰かわからなくなってしまいます。
こうなると認知症の本人と周囲の人間は、不安と孤独感から大きなストレスを抱えるようになります。
親しい人に忘れられることは非常にショックだと思いますが、無理に会話しようとせず、冷静にコミュニケーションをとってください。
場所の見当識
道順や周囲の風景など、空間を把握する感覚のことを、場所の見当識といいます。
場所の見当識障害によって起こる異変の例
- 外へ出かけて自分の家がどこにあるかわからなくなる
- 自分がいる場所が病院や施設だと認識できなくなる
- よく知っているはずの場所で迷子になる
場所の見当識障害でもっとも気をつけなければならないのが、徘徊行動です。
なぜなら、一人で徘徊している際に場所の見当識障害が起こると、自宅の場所がわからず行方不明になってしまうおそれがあるからです。
常に認知症の方から目を離さないのはもちろん、本人確認書類や緊急連絡先のメモを持たせるなど、対策を講じましょう。
認知症により記憶を忘れる順番
初めに記載した通り、認知症の方が記憶を忘れる順番にはある程度決まりがあります。
記憶障害と見当識障害に分けてその順番を解説しますので、参考にしてください。
記憶障害
記憶障害は、直近の記憶から順番に忘れていくといわれています。
具体的には、初期の症状として即時記憶・近時記憶を忘れ、認知症が進行するにつれて、意味記憶・手続き記憶などの重要な記憶を失っていきます。
当然忘れる順番には個人差がありますが、自分や家族の認知症がどこまで進行しているのかを把握する指標になるでしょう。
見当識障害
見当識障害の場合は、時間・場所・人物の順番に忘れていくのが一般的です。
具体的には、「今の季節がわからない」「ここがどこなのか理解できない」「目の前にいる人物が誰なのかわからない」といった順番で症状が現れる傾向にあります。
また記憶障害に比べて、見当識障害は日常生活に支障をきたしやすい疾患とされています。
なぜなら、見当識が正常でなければ、時間や場所などから総合的に物事を判断することができないからです。
さまざまな弊害を誘発する可能性があるため、日々のコミュニケーションのなかで違和感を見つけ、早期発見に努めたいところです。
認知症を進行させる要因
認知症には、進行を速める要因がいくつか存在します。
以下でそのうちの4つを紹介していきますので、ご確認ください。
考える機会の減少
考える機会が減ると、認知症の進行は加速していきます。
記憶障害や見当識障害による弊害を生じさせないために、当事者の行動を家族が制限する場面があるかもしれません。
ただし当事者にとって、認知症に起因するミスを指摘されたり、過度に行動を制限されたりすることは、大きなストレスになります。
また、萎縮して自発的な行動をためらうようになれば、思考力を鈍らせることにもつながります。
認知症の進行を遅らせるには、脳に刺激を与えることがとにかく重要なのです。
運動不足
認知症を進行させる要因の一つに、運動不足があります。
運動不足によって脳の血流が滞ると、神経細胞に悪影響を与えます。
また足腰が衰えて転倒し、入院するようなことがあれば、人と話す機会や脳への刺激が減って、思考力が鈍ってしまうかもしれません。
生活習慣病
糖尿病や高血圧をはじめとする生活習慣病は、認知症と深く関わっています。
生活習慣病にかかると、脳の血管が狭まって血流が滞る、脳血管障害を併発する可能性があります。
これは運動不足と同じく神経細胞に悪影響を与え、認知機能が衰える原因になるため、生活習慣病の方は病院で適切な治療を受けてください。
急激な環境の変化
施設への入居や引っ越しといった急激な環境の変化は、認知症を進行させる一因です。
認知症は記憶力や判断力の低下を招くため、環境の変化に適応するのは難しいものです。
また新しい環境では周囲との交流が減ってしまいがちで、脳に刺激がいかず、認知症が悪化する可能性もあります。
生活の環境を変える際は、少しでも負担を軽減できる方法を選ぶようにしましょう。
認知症の進行を抑える方法
認知症の進行は、次の方法で抑えることができます。
認知症の進行を抑える方法
- 適度な運動習慣を身につける
- 生活習慣を見直す
- 生活環境を見直す
- 安心できるような声をかける
- 記憶を試すような事実確認を控える
どの方法にも共通しているのは、当事者にストレスを与えないようにするのが目的だということです。
認知症の方のケアには周囲のサポートが必要不可欠であるため、安心して生活できる環境づくりを心がけてください。
日常生活への支障を軽減する方法
認知症による日常生活への支障を軽減するには、いくつか方法があります。
なかでも簡単に実践できるのは、メモをとることです。
認知症の初期段階で即時記憶を忘れると、自分がものを置いた場所や、とろうとしていた行動がわからなくなるときがありますが、メモを見ればすぐに思い出せます。
くわえて、メモをとることで情報をアウトプットできるため、そもそも物事を忘れにくくなる効果にも期待できます。
また認知症の初期から、規則正しい生活パターンをつくっておくのも効果的です。
そうすることで、物忘れがあっても混乱することが減り、生活への支障を軽減できます。
寝る時間や朝食の時間などを決めておき、規則正しい生活を送るとよいでしょう。
認知症になると、直近の記憶や時間の感覚から順番に忘れていく
今回は、認知症の方が記憶を忘れる順番や、発症の原因と対策を解説しました。
認知症の物忘れには記憶障害と見当識障害の2種類があり、それぞれ直近の記憶と時間の感覚から忘れていく傾向にあります。
ただし、忘れる順番や進行の速さに関しては個人差が大きいため、「まだ生活に支障がないから大丈夫」と油断するのは危険です。
周囲のサポートを受けながら、ストレスなく生活することを心がけましょう。
ルネクリニックでは、認知症の治療を目指した再生医療を提供しています。
患者様一人ひとりに寄り添った治療を提案させていただきますので、まずは一度お気軽にご相談ください。
① 治療方法 治療薬を鼻腔内に1滴ずつ垂らし、迅速に脳内に薬を届ける治療法です。 痛みはなく、仰向けの状態で30分程度の治療時間を要します。 治療回数は1クールで4回、治療期間の目安は約1ヶ月間となっております。 ② 副作用リスク ③ 連絡先 ⑤ 入手経路 ⑥ 効能に関する国内の承認機器・薬剤の有無 ⑦ 安全性に関する諸外国の情報 ⑧ 未承認である旨 ⑨ 未承認薬・機器 |